受賞歴 | ||
2003年 | 美の巨人の称号と共に ロイヤルアカデミー賞 受賞 |
「美の巨人」選考会 |
評論 |
||
靄に覆われた誰もいない湖の、白く透明な月の光に包まれ、やがてそよ風に煽られてさざめきカレイドスコープのようにちらちらと光を発する、そんな水の面を彷彿とさせる細やかな造形が隅々にまで行き渡り、センシティブな榊一男氏の感性が余すところなく発揮された不思議なイメージ。細やかで美しい細工は植物のようでもあり、しなやかにのび上がるリング部分はまるで湖の底を人知れず進む一匹の細く白い水ヘビの神秘なる軽やかさがある。観る者それぞれが細やかな細工に様々なイメージを重ね合わせ、やがては氏のイメージの世界へと誘われてゆくのである。そこは透明で儚く、優し気でありながら気品がある。素材の質感とイメージが心地よいハーモニーを奏で、テーマと素材がお互いを高めあう。何故こんなに豊かなイマジネーションの表現が可能なのだろうか。北の土地で暮らし製作活動を続けておられる氏は、溢れる自然の中で存分に美しい銀色の大地と親しんでいるのだ。瑞々しいその感性には驚かされる。 | ||
文:オリヴィア・マルズィウ |